Setsu. 1992-1995

1992年の秋から1995年の暮れまでの、長沢節先生の言葉を中心としたセツ・モード・セミナーの点景集 。 copyright (C) GRINO.

savez pas

先生は原稿を書く時にいちばん気をつけてることって何ですか?

知らないことを書かないこと!あとで、恥ずかしいでしょ。

arrière

nature

計算どうりにならないのが、芸術なんだよー。3に5を足したら“7”になるのは当たり前だけど…

えっ !? ザワザワ…

あっ、いくつだっけ?8か?

manuel

2に3を足せば5になるというのは理屈だが、美にはそんな屁理屈など無関係だ。あくまで常識とは違い、2に3を足したなら10にも15にも見えてしまうような嘘っぱちこそが美であり、芸術であると思いたい。

---------------- 「わたしの水彩」より

repos un peu

changée

1級の時のレクチャーで初めてセツ先生にした質問

あの、教科書に「現実の色やレイアウトは気にいらなければどんどん変えていい、嘘をつくうことが芸術だ」と書いてあったのですが、別なところで「地面は一番難しいので見ないで描く自信がなかったのだ。想像は、感覚の敵だ」とも書いてあって、ちょっと混乱しちゃったのですが…。

うん、いい質問だよ。おまえ。
それはね、色を変えるときは、現実を、見ながら変えるんだよ。見ないで変えたら駄目。見て、変えるの。分かった?

le fond épais

setsu?

はじめてした仕事で「挿絵・長沢節」なんて書いてあるじゃない。誰だこりゃ?なんて思っちゃったよ。

あれはね、編集の人がオレの名前を「長沢」しか知らなくてそこらにいた人に聞いてみたんだよ。そうしたらそこにいた人が冗談で……その頃「土」っていう小説を書いた「長沼節」っていう小説家がいて、そのもじりで「長沢節」って言ったらしいんだ。そしたらそれを冗談と思わなかったらしくて、そのまま乗せちゃったんだね。でーまあ、オレも挿絵だから本名じゃなくていいやって思って。

s'asseoir

menteur

ウソつきほど、芸術家よ。

setsu de l'hiver

mensonge

自然をどんなに上手に写しても、ただ写すだけでは絶対に芸術とはいえない。芸術においては嘘の方がつねに自然や現実よりも、もっと真実だからだ。

---------------- 「わたしの水彩」より