Setsu. 1992-1995

1992年の秋から1995年の暮れまでの、長沢節先生の言葉を中心としたセツ・モード・セミナーの点景集 。 copyright (C) GRINO.

重力に差別されているような幸せな歩き方や身のこなしが、まさに「モデコ」さんで、近寄りがたい美しさと存在感でしたが、話してみるとものすごく人なつっこい笑顔のやさしい人でした。デッサンが好きで、よく教室のうしろの方で描いているところを見かけました。

セツ先生は、デッサンの休憩時間などに目をつけていた(と思う)生徒に「オマエ、いい足してんな!モデルやんなさい!」と言ってスカートをひっぱたりして拉致してました。「ひえええ!」と思わず声をあげてしまった子もいましたが、モデコさんは「オマエ!モデルやるのかやらないのか、決めなさい!」と先生にぎゅっと手首を掴まれた時、「まあ、どうしましょう」と言って優雅に笑いました。

Modeco-san

p.95のジャボの付いたミモレ丈のスカートのモデルさんは、「モデコ」さんですね。この日のデッサンは印象に残っています。「モデコ」さんは同級の方でした。お名前は知りませんが、今でも「あの、モデコさんっていたでしょう」「あ〜、モデルみたいな人でしょ」で同級生には話が通じるという、とても印象的な方でした。

p.54とp.55のデッサンが大好きです。見開きになっているので、その印象もあるのでしょうが、「立っている」だけでなくこのモデルさんの「歩き方がわかる」ところまで描かれているように感じます。

先生は描いたあと、黒板にはりつけておいてくれます。「見てごらん、ケッサクができちゃった!」とか言いながら。今、描いたばかりのもの。みんなといっしょに描いた、同じモデルのポーズ。先生はどうとらえているか、どう「見て」いるか、どう線を発見していたか…。そういうことだったんですけど、当時は何も考えずに「センセー、うまいなー、元気だなー」ってただ眺めていました。

「あいまいな色が好き」には、この当時の先生のデッサンがたくさんおさめられています。隣で自分も描いていたモデルさんのデッサンですから、今見ると、そのデッサンだけでいろいろな事がよみがえってきます。

Livre de Setsu

【あいまいな色が好き。】1994年5月 文化出版局
【美少年映画セミナー】 1994年7月 角川書店

  と、いくつかセツ本の出版が相次ぎました。