Setsu. 1992-1995

1992年の秋から1995年の暮れまでの、長沢節先生の言葉を中心としたセツ・モード・セミナーの点景集 。 copyright (C) GRINO.

でもコレちょっと上手くいってるぞ、誰だ、コレ?うん、オマエ?コレ、イイ。コレ、偶然にキレイにいってるよ、A!

うん、もうちょいネ、ちょっと面白くいきそうだけどね。コレ、ちょっと変わった描き方だけど、もうちょっとやらないと、しまらないネ。

ああ、こういう…色がなんか、安っぽいな、コレ。あんまり、おいしそうじゃない、色が。ね、今度、色、気つけな。も少しおいしそうにしなさい。

意外とね、こういうの、ファッション雑誌なんかで使ってみようかって思うかもしれないね。ちょっとシャレた編集長だったらね。だからね、編集長のセンスしだいなの。ね、だから、フラれても恥ずかしくない、自分がね、採用にならなかったならば、ね、その編集長がセンス無いんだって、なぐさめるワケ。プーッ!わかった?だから平気なのよ。

ああ、こういうのネ。色はイイよ!ダレだ?これ?色キレイ、ホラ。この茶色と。ダレだ?ウン、イイよ、コレちょっと安っぽいけどね。コレもなかなかイイよ、キレイ!

これは今ふうイラストレーションって感じがする…ウマイよ、この子。これ、みんな同じ人?オマエ?あ、そう。こういうかわいらしいふうのも、こういうの…も、やるわけね。ウン、みんな面白いヨ。

だれが描いたか聞かなくっちゃ。コレ?コレを描いたの…オマエ?じゃ、棒をもらって選びなさい。アレ?アレと、ソレ?ハイ、そこのヘンチクリンなの描いたの、誰だ?ハイ、あの子。オマエ、見て、選んであるのか?ウン、ハイ、ヨシ!このへんでイイだろう。どれ…コッチから、見てこうか?

だれか選んでごらん…だれがいいかな、いちばん美人の子は…いないかな。ハイ!オマエ!いちばん美人に見えるからちょっと選んでごらん!ハイ、オマエ選んだのどれだ?

さ、この美人の編集長がどれを選ぶか…プーッ!

classe d'illustration

2級から「イラスト合評」という授業があります。土曜日で、月に2度くらいだったと思います。例えば「グランジ・ファッション(笑)のイラストを3点以上」とか「中吊り広告用のイラストを数点」とか、お題が出ることもあるのですが、お題とはほとんど関係なく、どんな絵でも貼り出しておけばセツ先生が見て、コメントしてくださいました。

とりあえず、全部見てもらえます。

しかし。先生の目は、わがままで素直でホンモノなので。

ワザとでもなく意識してでもなく、つまらないモノは目に入らない。ホントにただ、目に入らないだけのようでした。止まりません。

先生はいつも合評用の「緑の棒」で絵を指していましたが時々こうおっしゃっていました。

止まらないのはオレのせいじゃないのよ、棒が止まらないんだから。

何が描かれているか、とか、どんなスタイルか、ということにはまったく関係がなく、色の関係の美しさや、シャレているかどうか、といったことが基準だったように思います。タブローの合評と同じような感じでしたが、今思うと、ものすごく貴重な時間でした。もっと出しておけばよかったな、とつくづく思います。出すモノも、イラストとしてのスタイルなども無かったのですが、それでももったいなかった。当時はその貴重さに気づかなかったのでした。