Setsu. 1992-1995

1992年の秋から1995年の暮れまでの、長沢節先生の言葉を中心としたセツ・モード・セミナーの点景集 。 copyright (C) GRINO.

子供の絵はすごい、のですが、とにかくすごいのは4〜7才くらいの子供の絵でしょうか。ぜんぶ天才です。「7才までは神のうち」と言いますが、まさにそれですね。

それを過ぎると、人間らしく「考えて」動くようになってきます。そうするとなかなか絵もつまらなくなっていく。でもまだ12、3才くらいまでの子供の発想というのはものすごい。集中力も理解力も数十倍違います。生きてる時間が違うようです。小学3年生の時の一学期の3ヶ月。あの3ヶ月は30才過ぎの3年の感覚です。

女性の中でも、タブローのうまい、色のセンスに優れている方というのは、日常の生活も世界を「色」で見ているようですね。男に多いのが、世界をかたちで、「線」でなぞって認識して生活している人です。これは、デッサンには強いがタブローには決定的に不利です。それに、女性の方が視野が広く、細かいところまでよく見えている。

もうひとつ。やはり、女性の方が絵はウマイです。特別講義に来て下さった、ある男性のイラストレーターの先生もおっしゃっていました。「絵はどう逆立ちしても女性にはかなわないから、男でやっていこうと思ったら、プロデュースとか見せ方の構成とかも仕事として出来ないとやってはいけないよ」とのことでした。

クラスメイトがパリのお土産に、フランスの子供がルーブルや、ピカソ美術館などで模写をしたタブローの小さな画集を持ってきました。すごいんです、これが。下は2歳から12歳くらいまで。もう、ピカソもマチスも…フォーヴィズムでもなんでも、スタイルなんて関係ない…っていうより、ぜんぶ含まれているのかな、すでに。子供の絵には。すごいです。笑うしかないくらい、美しい絵です。セツ先生、「負けたーっ!」って笑ってました。マチスを模写した絵を指しながら。

子供の絵って不思議だよね…世界中でも、子供の絵は子供の絵っていう、あのスタイルなんだよ。

––––––––––––– ある先生

オマエたち、山下清には、かなわないよーっ!あれは、ホントウのキチガイだから。

Quelque chose de obstacle à la peinture

タブローは、特にセツでやるような四六版半切り(B2)といった大きさの水彩画はあまり経験することではないので、最初は慣れずに、いきなりセツのやり方でやって、かなりイイ絵をモノにすることがあります。しかし、あの時ウマクいったから、といっていい気になってやると…描けば描くほど、慣れるほどに小さな絵になっていってしまったりします。欲が出たり我が出たりすると…。言葉や頭では、わかってはいるのですが。「絵ってうまくなるのかな…」と言ってた人もいました。

Les Enfants

セツでタブローを描きはじめて。まず気がついたことは、「絵は、子供とキチガイと偶然にはかなわない」ということです。